第11話 ラーメン見渡すかぎり砂地の上に簡易舗装された道路と、その両側にあるT字形の電信柱が延々と続く。 たまに岩混じりの低い山の間を通り抜ける以外は 何の変化もない道で、すれ違う車もほとんど無い。 空は真っ青、太陽はギラギラ。 エアコンなしのランクルの中には、おっさん5人。 湿度が高くないのが唯一の救い。 行けども行けども同じ景色の中を3時間ほど走って、 ようやく町らしいものが見えてきた。 「そろそろ、お昼ですね。ラーメン食べるか?」 ワンさんが誘う。 OK!と目で合図。 着いたところは、 長屋形式の店が軒を連ねている中の1軒の食堂。 調理場は店の前、 食べる場所は店の中というアジア共通のスタイル。 母親と息子らしきお兄さんが調理している脇で 娘さんが麺を作ってる。 渦巻き状に皿に盛られた太麺を手で引っ張りながら、 毛糸を巻くみたいに両手に巻き付けて細くしている。 なかなか手際がいい。 いつもの習慣でビールを注文したが、 コップではなく所々欠けてる湯飲み茶碗が出てきた。 まあ、おじさんもIBさんも運転するからいいけど。 免許の無いNさんだけは、 にんまりといやらしい笑みをうかべながら、 その湯飲み茶碗でうまそうに飲んでやがる。 「けっ!」 むかつくので視線をはずして他を見ていると、 目の前にあるプラスチック製の箸入れに気づいた。 中に入ってる割り箸も中国では珍しいが、 貼ってあるシールに「抗菌仕様」だって。 この店には絶対似合わん。 と、そこへ、お待ちかねの「ラーメン」らしきもの登場。 だって、ざるうどんみたいなものが乗ってる皿と、 野菜炒めのつゆだくが乗ってる皿が出てきたんだわ。 ワンさんに聞くと麺に野菜炒めをぶっかけて食べるんだって。 なるほど、さっそくやってみる。 うん、なかなかうまい。 嫌いなたまねぎを器用によけて食べてるおじさんを、 宇宙人に初めて出会ったみたいな顔して 見てるワンさんが忘れられない 「回民飯館」(食堂の名前)でした。 |